東京藝術大学 音楽学部楽理科/大学院音楽文化学専攻音楽学分野

ベーレンライター社特別講演(音楽学部特別講座・楽理科総合ゼミナール)

日 時:2019年 12月 3日(火)、13:00~16:10
場 所:5-401
対象学生:楽理科(音楽学)、ピアノ科、および全科
講 師:マーリオ・アシャウアー博士(古楽演奏家、音楽学者)
ブリッタ・シリング=ヴァング[シーリン=ウォン]博士(音楽学者、ベーレンライター社ピアノ作品校訂部門の総括編集者)
通 訳:中島 小百合

講座題目:「ウアテクストとは何か:クリティカル・エディション作成プロセスにおける諸問題とベーレンライター社の校訂方針」

講座内容:
アシャウアー博士:自身が校訂した作品の舞台裏と校訂プロセスを紹介。特に楽譜の向こう側にある諸問題、普段はなかなか語られることのないものの、ベーレンライター批判校訂版で重きを置いている、歴史的な演奏慣習や記譜法についても、詳しく解説する。

シリング=ヴァング博士:「原典版(ウアテクスト)」という用語のもつ意味と、それが示す学術的な批判校訂版の制作プロセスについて。近年出版されたベーレンライターのピアノ作品を例に、編集者が取り組む原典資料の数々と、それらの評価方法から解釈に至るまでの過程で直面する、さまざまな課題を明らかにする。あらゆる資料に当たり、その中にある構造を読み解き、どの資料が最終的な判断の基礎になり、作曲家の意図に限りなく近い楽譜であると編集部が見なし進めてゆくのか、その緻密なプロセスを紹介する。

[講師略歴]
アシャウアー博士:
1980生。指揮者、チェンバロ奏者、音楽学者。アントーン・ブルックナー音楽院で指揮法、ヴィーン藝大でチェンバロを学び、ヴィーン大学で修士・哲学博士号(音楽学)を取得。古楽奏者としてはEnsemble NovAntique Linzを創設、カラマス・コンソートのメンバーとして国際的に活躍。楽譜校訂者としては、新ブルックナー全集に所属、新シューベルト全集でオペラ《アドラスト》を編纂・初演、ベーレンライター社からモーツァルトやシューベルトのピアノ作品の批判校訂版を出している。教育者としても、欧米の多数の音楽大学・学部で後進の指導にあたる。2013年にはオーストリア科学財団によって「35歳以下の最も優秀な墺人研究者35人」に選ばれる。校訂譜と主著2点 Handbuch Clavier-Schulen: 32 deutsche Lehrwerke des 18. Jahrhunderts im Überblick, Kassel: Bärenreiter, 2011;Einheit durch Vielfalt?, Frankfurt aM: P. Lang, 2006)は本学所蔵。

シリング=ヴァング博士:
音楽学者、楽譜編集者。ケルン大学で音楽学、ロマンス諸語の言語と文学、哲学を修めたのち、Ch. V. アルカンに関する論文(1986出版)で博士号を取得。リスト新全集の編集、大音楽事典MGG新版の監修をつとめたのち、ベーレンライター社でピアノ作品の批判校訂版の出版を統括。