東京藝術大学 音楽学部楽理科/大学院音楽文化学専攻音楽学分野

第14回総合ゼミ 博士課程1年生発表

第14回総合ゼミ 博士課程1年生発表

日時:2025年11月25日(火)13:15~14:30

場所:東京藝術大学音楽学部5号館 5-408教室

発表者 ①: 荒木  理紗

発表題目:J. S. バッハの声楽作品の形成期と同時代作曲家 ヴァイマル時代に焦点をあてて

発表概要:
 J. S. バッハの経歴の初期に関しては、個別作品の資料研究が豊富に蓄積されてきた一方で、彼の作曲家としての発展の実態は、関連史料の欠如に起因し、特に声楽作品において未だ不明な点が多い。この解明にあたって、ヴァイマル時代(1708-1717)は、バッハが自身のカンタータに初めて劇場様式を導入したことから転換期として重要である。発表者は、同時代の他作曲家との影響関係を明らかにすることを目的に現在研究を行っている。
 本発表では、バッハとC. グラウプナーによる同一テクストに基づくカンタータ《わが心は血の海に泳ぐ》(BWV 199、GWV 1152/12b)におけるレチタティーヴォ楽章を対象に、両者の付曲を比較しその共通点および差異を明らかにする。そして近年の関連研究(Wollny 2024、Schulenberg 2025等)を踏まえ、博士研究における今後の展望について検討する。

———————————-

発表者 ②:東舘  祐真

発表題目:1928年の昭和大礼における音楽行事

発表概要:
  1928年の日本では、昭和天皇の即位礼とそれに伴う皇室の祭祀である大嘗祭が執り行われた(昭和大礼)。戦前の日本国家にとって天皇の即位礼は国家イベントであり、宮中行事・祭祀にとどまらず、天皇の即位を寿ぐ「奉祝」行事が、政府あるいは民間の主導で多数催された。それらには震災や恐慌にて生じた社会不安を「奉祝」によって緩和し、天皇の存在を国民に広く印象づけようとする企図が垣間見られ、総力戦体制下の「皇紀二千六百年」(1940(昭和15)年)等の先例となるプロパガンダ的側面を持っていたと言える。本発表では以上のような昭和大礼に関する、音楽関連行事の調査を横断的に行いつつ、いくつかの事例を取り上げながら、日本近代音楽史における昭和大礼の重要性について検討する。